2007年 11月 10日 (土) 

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉69 宇霊羅山(うれいらさん、604メートル)

     
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  JR岩泉駅の真正面にそびえる断崖(がい)絶壁、それが宇霊羅山(うれいらさん)である。真下に、洞窟と地底湖を蟻(あり)の巣状に形成する龍泉洞だ。白い岩を踏みつけるたびに気持ちが地中と地表を出たり入ったりして、仮想画面に飛びこんだようなバーチャルリアリティーの山遊びが楽しめる。

  宇霊羅山と小本川に挟まれて発達した岩泉町は、おとぎ話のような町並みがきれいだ。山は石灰質の岩塊で、カルシウムを豊富に含む泉がこんこんと湧(わ)きだす。山と川はまぎれもなく岩泉のシンボルである。これにマツタケを産するというのだから、もはや岩泉の名を知らない人はない。

  アイヌの語源による「宇霊羅山」は、霧の多い山という意味らしいが、霧に巻かれた情景をこれまで私は見たことがない。岩泉に住む山崎さんと駅で落ち合ったのも空気の澄むある快晴の日であった。私は、宇霊羅山から音床山(おんどこやま)を縦走し、北側の配羅集落に下ろうと考えた。

  山崎さんはお手製の概念図を私に示し、宇霊羅山に向かって指差した。−−

  「登山口は、東から和山林道に入って2キロメートル地点」「1軒のログハウスの裏路をたどる」「路(みち)はだんだん急になる」「岩陵上部の右が宇霊羅山の頂上」「ここまでは1時間程度かかり、迷うことなく登るでしょう」。

  さらに音床山へは、「稜(りょう)線を西へ下り小高い丘を一つ越す」「比較的平坦になったら右寄りに西進する」「北側が急斜面の稜線をたどると、がけっぷちに音床山の三角点がある」「この間、ルートは不明瞭(りょう)で1時間かかる」。

  「音床山からはアカマツ林の緩い下り」「鞍部に交差した古い林道を右」「新しい林道に合流したのち右へ下る」「小川を渡って県道7号線に出てから1キロメートルちょっとで配羅のバス停に着く」と、山崎さんの説明は丁寧で分かりやすい。あらかじめ私の車を下山地の配羅に回してもらえることになった。
 
  山はカラカラに乾いていた。キノコはさっぱりで、目に付くのはドングリとクマのふんばかりだ。初めのうちは面白がって指を折っていた私だが、古いふんに新しいふんが重ねてあったりで、もう数などどうでもよくなった。クマは頻繁に山中を調べている。登山者の私にキノコが見つけられるはずがないのだ。

  宇霊羅山から音床山の二等三角点に寄り、配羅へ抜ける縦走は、スムーズに抜けても3時間はかかる。

  「アベさん、はいこれ!」なにかと思えば、袋の中で岩泉産のキノコが笑っていた。山崎さんご親切ありがとう。洗ってもなお芳(かぐわ)しい炊飯器であった。

(版画家、盛岡市在住)

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