2007年 12月 1日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉947 望月善次 コロイドの光の上に

 コロイドの光の上に張り亘る夜の穹
  窿をあかず見入るも。
 
  〔現代語訳〕コロイド状の光の上に一面に広がっている夜の天空(穹窿=きゅうりゅう)を飽きることなく見入ったのです。

  〔評釈〕「大正十年四月」〔「歌稿〔B〕〕五十二首中の四十一首目の「803歌」で、「旅中草稿」四首の三首目。単独作品として考えた場合は、話者の位置特定は困難であるが、作品の置かれた場所からすれば、車中から天空を眺めている話者を想定することができよう。「コロイド」は「ギリシャ語のkoll(膠にかわ)に由来し、分子よりは大きいが普通の顕微鏡では見えないほどの微細な粒子が分散している状態。」〔『広辞苑』〕で賢治にとっての重要概念。「岩手山」〔『春と修羅』〕の有名な一節「そらの散乱反射のなかに」も、天体をコロイドとして見る賢治の見方が現れている。「張る」や「亘る」には種々の意味があるが、前者からは「一面性」を、後者からは「広がり」を取ることとした。
(盛岡大学学長)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします