2007年 12月 3日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉949 望月善次 エナメルの空に真黒き

  東京
  エナメルのそらにまくろきうでをさ
  さげ、花を垂るるは櫻かあやし。
 
  〔現代語訳〕エナメル色の空に真っ黒い腕を挙げ、花を垂れているのは櫻でしょうか。何だか怪しい雰囲気がありますねぇ。

  〔評釈〕「大正十年四月」〔「歌稿〔B〕〕五十二首中の四十三首目の「805歌」で、「東京」七首の冒頭歌。「ささげ」の後の読点は一枠をとっておらず、「げ」と同じ枡(ます)の中に打たれている。また、以下「811歌」までの七首を枠で囲んでいる。「エナメル」は「エナメルペイントの略。また金属の表面を保護するガラス薄膜であるホウロウの別称」〔『マイペディア』〕。賢治は例えば「雨にぬれ/桑つみをれば/エナメルの/雲はてしなく北にながるゝ」〔129歌〕のように、エナメルを「雲」のイメージに用いていることを指摘しているのは『新宮澤賢治語彙辞典』であるが、ここでは空全体の様子に用いている。桜を、その枝を「くろきうで」とし、花を垂れているとしているところは賢治的。

(盛岡大学学長)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします