2007年 12月 4日 (火)
■ 啄木短歌の日本酒誕生 「ふるさとの山に向ひて」
日本酒「ふるさとの山に向ひて」の初出荷を記者発表する新井満さん(左から3人目)ら
歌人石川啄木の代表歌である「ふるさとの山に向ひて」の名を冠した日本酒が3日、あさ開(本社・盛岡市、村井良隆社長)から初出荷された。商品化のきっかけをつくった作家新井満さんは「啄木が再び全国的に注目されることは、盛岡市が全国的に注目されることと同じこと。誕生したばかりの日本酒をまず盛岡市民、岩手県民の皆さんに飲んで愛してもらいたい。古里自慢の一つにしてほしい」と、同日の記者発表で話した。
盛岡ブランドの新商品となる日本酒は大吟醸と純米酒の2種類。大吟醸は花巻市石鳥谷産米の吟ぎんがを100%使用した。720ミリリットルのオリジナルラベル、紙箱入りで3000円。純米酒は盛岡市玉山区産米のかけはしを100%使用した。720ミリリットルのオリジナルラベル、紙箱入りで1500円。
どちらも現代の名工に選ばれた同社の南部杜氏藤尾正彦さんが手がけた。大吟醸は果実を思わせるかぐわしい香りを持ち、上質で清涼感のあるすっきりとした味わい。純米酒は精米歩合を73%と上げながらも、雑味を出さないようにし、しっかりとした、ふくらみのある香りとなめらかな米のうまみを出すようにこだわった。熱かんで味わうのがお薦めという。
大吟醸と純米酒の贈答用詰め合わせ。詩集付き、CD付き各5250円で限定500セット
仕掛け人の新井さんは近年、啄木の短歌に曲を付けCDや写真詩集を制作するなど、近年、啄木顕彰に力を入れる。今年4月ごろ商品化によって、啄木の素晴らしい作品、言葉、世界を日本中に広げていけないかと考えた。一番ふさわしいのは日本酒ではないかと、新井さんが商標登録したという。
だが「そもそも啄木の知的財産であり、一個人が所有しているより、古里の盛岡市にプレゼントしたほうが自然」と、商標権を同市に無償譲渡。併せて、村井社長にアイディアを提案し、商品化への道が開けた。10月から仕込んだ「ふるさとの山に向ひて」第1号が発売となった。今回は主に県内で流通し、次の出荷が見込まれる来年1月からは県外へも販路を広げていく。
商標権の譲渡に当たって新井さんが示した条件は使用料の5分の3は財団法人石川啄木記念館に、5分の2は遺族の石川家と宮崎家に等分で寄付すること。啄木顕彰につながっていくことになる。
作家新井さんにとって啄木は少年時代からのファンで文学上の恩師。ところが「最近影が薄いのではないか」と気がかり。「すばらしさを日本中の人に再認識してもらうための21世紀石川啄木再生プロジェクトのようなもの」と位置付けている。
村井社長は新井夫妻との会食で聞いた「日本人の心の中にはああいう玉山のような原風景があるのではないか。日本で古里を持つすべての人の心の原風景と重ね合わせて飲んでもらえるお酒にしたい」という話に感動したという。
谷藤裕明同市長は「市が進めている盛岡ブランドの主要プロジェクトそのもの。ファンと一緒に啄木の顕彰に一層取り組みたい」と語る。
新井さんはさっそくネギ鍋をさかなに純米酒を熱かんで試し「非常においしかった。と同時に古里新潟の山河が思い出され、非常にしみじみとした気分になり、心がほこほこしてきた」と太鼓判。
啄木記念館の山本玲子学芸員は「今回の気持ちはありがたく、励みになっている」と新井さんらに感謝。「香りがいい。『悲しき玩具』を広げながら味わいたい」とお酒の印象を話していた。
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