11月、早くもアジアゴの街の店頭に、クリスマスケーキが並び始めました。主婦も手作りケーキに腕を振るうこの季節、その定番は日本でもおなじみの「ティラミ・ス」です。
「ティラミ・ス」を直訳すると「わたしを持ち上げて」。つまり「元気を出そう」の意味です。
材料はクリーム仕立ての生チーズ「マスカルポーネ」と、エスプレッソコーヒー。ここ北イタリアのベネト州が発祥といわれます。
器に敷き詰めた棒状ビスケットに、コーヒーを染み込ませ、その上に果実酒・卵黄・砂糖とマスカルポーネを混ぜ合わせたクリームを、2回3回と塗り重ねて出来上がり。
ところが、ティラミ・スに使うビスケットはトリノ名物のサヴォイアルディ。果実酒はシチリアのマルサーラ。マスカルポーネはミラノ周辺が特産地です。まさにイタリア各地方の名産をベネト州に集め、国を代表するお菓子が誕生したのです。
先日、友人サブリーナが、わが家で開いた子どもたちのパーティに、30人分の特大ティラミ・スを差し入れてくれました。
彼女は料理名人で知られ、ジャガイモ料理にチョコレートを使ったり、マスカルポーネと馬肉のくん製を混ぜてピザの具にするなど、いろんなアイディアで驚かせるのです。
サブリーナが持ってきてくれたティラミ・ス(写真)はエスプレッソ代わりに牛乳、マルサーラ代わりにラム酒を使い、杏の実のエッセンスで仕上げたものでした。子供用にミルクと果実の香りを詰め込んだのです。
彼女のモットーは「伝統とオリジナリティ」。子供たちに、ティラミ・スを盛り分けながら「熟す前の青いトマトで、緑色のジャムに挑戦しているの」と、新アイディアをこっそり教えてくれました。
極めて保守的なイタリアのスローフードは、日本でも人気のようですが、その魅力を支えるのは、手間をかけ、時間をかけて楽しむ「ティラミ・ス」の精神なのです。 |