2007年 12月 4日 (火) 

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉32 及川彩子 ティラミ・スの精神

 11月、早くもアジアゴの街の店頭に、クリスマスケーキが並び始めました。主婦も手作りケーキに腕を振るうこの季節、その定番は日本でもおなじみの「ティラミ・ス」です。

     
   
     
  「ティラミ・ス」を直訳すると「わたしを持ち上げて」。つまり「元気を出そう」の意味です。

  材料はクリーム仕立ての生チーズ「マスカルポーネ」と、エスプレッソコーヒー。ここ北イタリアのベネト州が発祥といわれます。

  器に敷き詰めた棒状ビスケットに、コーヒーを染み込ませ、その上に果実酒・卵黄・砂糖とマスカルポーネを混ぜ合わせたクリームを、2回3回と塗り重ねて出来上がり。

  ところが、ティラミ・スに使うビスケットはトリノ名物のサヴォイアルディ。果実酒はシチリアのマルサーラ。マスカルポーネはミラノ周辺が特産地です。まさにイタリア各地方の名産をベネト州に集め、国を代表するお菓子が誕生したのです。

  先日、友人サブリーナが、わが家で開いた子どもたちのパーティに、30人分の特大ティラミ・スを差し入れてくれました。

  彼女は料理名人で知られ、ジャガイモ料理にチョコレートを使ったり、マスカルポーネと馬肉のくん製を混ぜてピザの具にするなど、いろんなアイディアで驚かせるのです。

  サブリーナが持ってきてくれたティラミ・ス(写真)はエスプレッソ代わりに牛乳、マルサーラ代わりにラム酒を使い、杏の実のエッセンスで仕上げたものでした。子供用にミルクと果実の香りを詰め込んだのです。

  彼女のモットーは「伝統とオリジナリティ」。子供たちに、ティラミ・スを盛り分けながら「熟す前の青いトマトで、緑色のジャムに挑戦しているの」と、新アイディアをこっそり教えてくれました。

  極めて保守的なイタリアのスローフードは、日本でも人気のようですが、その魅力を支えるのは、手間をかけ、時間をかけて楽しむ「ティラミ・ス」の精神なのです。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします