2007年 12月 4日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉950 望月善次 青木青木はるか千住の

 青木青木はるか千住の白きそらをに
  なひて雨にうちどよむかも。
 
  〔現代語訳〕青木アオキよ。お前は、その遙か向こうに千住の白い空を背負って、雨に大きな音を立てて鳴り響いています。

  〔評釈〕「大正十年四月」〔「歌稿〔B」〕〕五十二首中の四十四首目の「806歌」で、「東京」七首の二首目。「アオキ(青木)」は、ミズキ科の常緑低木。帯紫褐色の春の小花と冬の赤い実が知られていて、いずれも季語にもなっている。抽出歌においては、前後の作品から春のオアキ。「どよむ・とよむ(響む・動む)」は、「トヨはオノマトペ。平安末頃から濁音化。大きな音・声を出すこと。「青木VSになひて」「青木VSどよむ」が結合比喩(ゆ)。一般的な表現なら「アオキが、遠くの白い空を背景にして、雨に大きな音を立てています。」というところを、賢治愛好の結合比喩を用いるとこういう作品に仕上がるのである。背景の「白きそら」や「雨の音」に着目しているところが、また賢治的である。

  (盛岡大学学長)

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