ここはまた一むれの墓を被ひつゝ梢
暗みどよむときはぎのもり。
〔現代語訳〕ここはまた、一群の墓を被いながら、梢も暗く、大きな音を立てている常緑樹の森なのです。
〔評釈〕「大正十年四月」〔「歌稿〔B〕〕五十二首中の四十六首目の「808歌」で、「東京」七首の四首目。連作中の一首として読むならば、「千住」(近く)で〔806歌〕、桜も咲いている所〔807歌〕となる。桜の華やかさに対照的な「梢暗みどよむときはぎのもり」であるから、冒頭の「ここはまた」が生きることになる。ところで「梢」の訓(よ)みは「こずえ」ではなく「うれ」であろう。「うれ」と訓んだ場合でさえ、第四句は「うれくらみどよむ」と八音となる。これでも字余りで、仮に「こずえ」と訓むと九音となってしまうからであろう。抽出歌を読んでいながら、もちろん、直接の関連はないのであるが、童話「二十六夜」の舞台である実相寺の林(花巻)を、つい連想してしまった。
(盛岡大学学長) |