2007年 12月 7日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉953 望月善次 咲き初めしソメイヨシノの

 咲きそめしそめゐよしのの梢をたか
  みひかりまばゆく翔ける雲かな
 
  〔現代語訳〕咲き始めたソメイヨシノの梢が高いので、光もまばゆく飛んで行く雲なのです。

  〔評釈〕「大正十年四月」〔「歌稿〔B〕」〕五十二首中の四十七首目の「809歌」で、「東京」七首の五首目。「そめゐ」の「ゐ」の個所は、いったん「み」と書き、抹消した結果の空白がある。「梢をたかみ」は、まず「梢」の訓(よ)みは、昨日の「808歌」でも言及したように「うれ」。意味は「〜を○み」のおなじみの慣用句から「〜が○なので」となる。ソメイヨシノは、ご存じの公園や街路樹として最も一般的な桜。ヒガンザクラとオオシマザクラの雑種。名前は、江戸時代の染井村の植木屋から売り出されたことに由来する。賢治の桜嫌いは「反俗的潔癖感のある種の屈折、孤独な信条のもたらす離群性の傾向が認められる」〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕のだが、ここにも、「雲を見る賢治」がいる。

(盛岡大学学長)

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