2007年 12月 8日 (土) 

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉71 霞路ケ岳(かろがたけ、508メートル)

     
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  舞い降りたオジロワシのように突きでた船越半島は、山田湾の仁王門だ。その北端全部が、海抜0メートルから登る「霞露ヶ岳」である。

  霞と露の文字をあてた読みは「カロ」。湾側から眺めるとくし形に見えたりカメさんに見えたり、ちょっと乙女チックで口調も軽やかだ。

  もし、船越半島がなかったら山田湾に静寂はない。ホタテやカキの養殖棚を守る霞露ヶ岳は、要塞の断崖で太平洋にうちむかい「これより内に、邪悪なものは入るべからず」と、宣言するかのようだ。

  盛岡から国道106号を東進、宮古で45号を南下して船越半島の大浦地区へ。三差路を大浦小学校方面へ右折したらすぐ墓地の角を左に曲がり、峠を越える。

  ドドドド、ドッガ〜ン−漉磯(すくいそ)海岸で海がいきなり吼(ほ)えた。磯の香りもプ〜ンと届く。距離140キロメートル・3時間。やっと縮こまった手足が開放された。

  海にむかって左手「陸中海岸自然歩道・山頂まで3キロメートル・2時間」の標柱が登り口。ときどき豪快な岩肌と海面をのぞき、アカマツの巨木をぬって高度をかせぐ。垂直300メートルの赤平金剛の大絶壁に30分やそこらで立ってしまう。

  標高421メートルポイントで路は西を向く。ナラやブナの梢(こずえ)から透ける山田湾がきれいだ。ゆるやかな尾根のアップダウンを1・5キロメートルほどくり返して、狭い山頂に立った。さらに北へ足をのばすと、小根ヶ崎と仮宿崎の上部に至る。

  山頂直下の大岩には霞露ヶ岳神社奥宮が祀(まつ)られている。今年9月の大浦地区・霞露嶽神社式年大祭では、大漁と家内安全を願って虎舞や大神楽、大浦さんさ踊りが奉納されたという。3年に1度の大祭は、平成22年に開催される。

  地図に記してある大浦ルートは、奥宮と里宮を結ぶ長い参道だ。神社からさらに100メートル先、右手尾根上に二等三角点が設置されているため、再確認にと私は大浦側に下った。

  しかし車とは方角が違うので、そのまま大浦集落まで行ってしまうわけにはいかない。三角点から約1・3キロメートルくだり鳥居をくぐった直後、左に折れる林道へ方向転換し、漉磯海岸に近づくルートをさぐった。

  林道には標識が全くない。T字路は右へ。古い林道からシイタケ栽培地を抜け、砂利の生活道路に出たら右折。やがて漉磯海岸まで1・4キロと書いた「陸中海岸自然道」の標柱に出くわす。全行程ロスなく巡って4時間30分かかった。

  霞露ヶ岳のように海面ゼロからスタートする山は、そうあるものではない。−東方からオジロワシが飛来した。そこに霞露ヶ岳という神を使わした−私の空想がくるりと輪を描いた。

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