2007年 12月 11日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉956 望月善次 カサとばかりつぶやきの声は

 かさとばかり呟きの声は聞え来りぬ
  雑木光りて青きそらより
 
  〔現代語訳〕「かさっ」というほどの(かすかな軽い)呟きの声が聞こえて来ました。雑木が光っていて、その上にある青い空から。

  〔評釈〕「大正十年四月」〔「歌稿〔B〕」〕五十二首中の五十首目の「811a歌」。「東京」七首の左脇に走り書きのようにして、二行で書かれている。「かさ」は、現代語でいえば「かさっ」か。濁音化した「がさっ」が「大きい音や荒い音」に使われるのに対し、「すれるなどのかすかな軽い音」に使われる。類語に「かさかさ/がさがさ」「かさこそ/がさこそ」もある。それにしても「かさっ」は「軽い物やかたい物、乾いた物が一度当たったり、触れたりする音」であるから〔『暮らしのことば 擬音擬態語辞典』〕、「呟きの声」のオノマトペとしては、もう一つしっくりしないところがあるとするのが評者の感覚。「雑木光りて」と「青き空」は、同一空間にはないが、その相違の無視も賢治的。

(盛岡大学学長)

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