2007年 12月 12日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉957 望月善次 はんの木のみどりみじんの

 「はんの木(ぎ)の
  みどりみぢんの葉の向(もご)さ
  ぢやらんぢやらんの
  お日さん懸(か)がる。」
 
  〔現代語訳〕「ハンノキ(榛の木)の緑の細かい葉の向うに、ぢやらんぢやらんと(黄色い)お日様が輝いています。」

  〔評釈〕今週は、「歌稿」の考察を中断して、「鹿踊りのはじまり」に在る短歌体の六首をお届けしたい。ご承知のように「鹿踊りのはじまり」は、『注文の多い料理店』の中に収められている作品。草稿等は存在していない。短歌体の部分は、いずれも鹿の台詞(せりふ)に相当するものであるから、「鹿踊りのはじまり」は、「歌物語」でもある。(ちなみに「歌物語」は、詞書から発展したもの。)六首の短歌体の台詞は、いずれも地域語を交えた四行書き。第二句・第三句を一行として、他の句は一行としているところも共通している。抽出歌は、「一ばん右はじにたつた鹿が細い声でうたひました。」と記された六首の冒頭歌。「嘉十はもうほんたうに夢のやうにそれに見とれてゐたのです。」に続くものでもある。「ぢやらんぢやらん」は、通常では鐘等の大きな物が出す音だが、ここでは太陽の様子。

(盛岡大学学長)

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