2007年 12月 13日 (木) 

       

■  〈お父さん絵本です〉188 岩橋淳 「いのしし」

 書店の店頭では、年賀状コーナーがにぎわっています。来年のえとは、ネズミ。アレンジもしやすく、使いやすいキャラクターですよね。去年の今ごろは「イノシシってさぁ、ジミなんだよね」などと、イノシシにしてみれば迷惑なハナシですが。…さて国内外で野生動物を追い続ける写真家がイノシシにスポットを当てたのが、今週の一冊。これまであまり採り上げられることのなかったその生態が、季節の移り変わりを背景に描かれています。

     
   
     
  「うりぼう」と呼ばれる生後数カ月間の愛くるしさ、打って変わって剛毛を身にまとった成獣の猛々しさ、たくましさ、そして母の強さ。山に分け入り、イノシシの親子を追い続けた作者は、この山の王者にすっかり魅入られます。やがて自らも野生と化して山を踏み分ける作者の語り口は、写真のキャプションの域を逸脱しつつも、ページを繰る読者には一編の叙事詩のような振動を伴って伝わってくるものがあります。老いたイノシシとの遭遇のくだりでは、その神々しさに、思わずゾクリとしてしまうほど。商品価値としての「キャラクター」などとは無縁の、侵しがたい「生」の記録が、ここに、あります。

  【今週の絵本】『いのしし』前川貴行/写真・文、アリス館/刊、1680円(税込み)5歳〜(2007年)

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