2007年 12月 13日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉958 望月善次 お日さんを背中さしょえば

 「お日さんを
  せながさしよへば、はんの木(ぎ)も
  くだげで光る
  鉄のかんがみ。」
 
  〔現代語訳〕「お日様を背中に背負うと、ハンノキ(榛の木)の木も砕けて光るのです。鉄の鏡のように。

  〔評釈〕「鹿踊りのはじまり」〔『注文の多い料理店』〕の中に収められた短歌体のもの六首のうちの二首目。一首目に続いては「その水晶のやうな声に、嘉十は目をつぶつてふるえあがりました。」とあり、さらに「右から二ばん目の鹿が、俄かにとびあがつて、それからからだを波のやうにうねらせながら、みんなの間を縫つてはせまり、たびたび太陽の方にあたまをさげました。」として抽出歌が続く。作品の背景として重要な位置を占めるハンノキは、「ハリ(榛)の木」で賢治は別に「赤楊」の文字もあてているがいずれも厳密には問題がある〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。地域語の使用は、「二音一拍」の日本語の性質に由来する短歌の五音七音が、古典語のみでなく、地域語、現代語等を包み込める証し。

  (盛岡大学学長)

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