「お日さんは
はんの木(ぎ)の向(もご)さ、降
りでても
すずき、ぎんがぎが
まぶしまんぶし。」
〔現代語訳〕「お日様は、ハンノキ(榛の木)の向こうに降りていますが、ススキもぎんがぎがと輝き、本当にまぶしいほどです。」
〔評釈〕「鹿踊りのはじまり」〔『注文の多い料理店』〕の中に収められた短歌体のもの六首のうちの三首目の作品。話者をして「ほんたうにすすきはみんな、まつ白な火のやうに燃えたのです。」と語らせてもいる一首。「向(もご)さ」、「降りでても」とここでも、地域語が使用されているが、短歌が地域語(や古語)を包みこむ器であることは昨日も触れた。(だから、啄木などが主張した「短歌の基盤は文語である」という考えは迷信に過ぎない。)オノマトペ「ぎんがぎが」は、共通語ではないが、「ぎらぎら」や「銀」等にも通じようから、それほど違和感がないのではというのが評者の見解。結句の「まぶしまんぶし」が「まぶしまぶし」とならないのは、短歌定型の七音が要請するものである。
(盛岡大学学長) |