2007年 12月 17日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉962 望月善次 ぎんがぎがのすすぎの底で

 「ぎんがぎがの
  すすぎの底(そご)でそつこりと
  咲ぐうめばぢの
  愛(え)どしおえどし。」
 
  〔現代語訳〕「(夕陽を受けて)ぎんがぎがと(光り輝く)ススキの原の底で、ひっそりと咲いているウメバチソウは、愛らしい、本当に愛らしいのです。」

  〔評釈〕「鹿踊りのはじまり」〔『注文の多い料理店』〕の中に収められた短歌体のもの六首のうちの最終歌。「この時鹿はみな首を垂れてゐましたが、六番目がにはかに首をりんとあげてうたひました。」に続く一首。抽出歌の後は「鹿はそれからみんな、みぢかく笛のやうに鳴いてはねあがり、はげしくはげしくまはりました。/北から冷たい風が来て、ひゆうと鳴り、はんの木はほんたうに砕けた鉄の鏡のやうにかゞやき、かちんかちんと葉と葉がすれあつて音をたてたやうにさへおもはれ、すすきの穂までが鹿にまぢつて一しよにぐるぐるめくまてゐるやうに見えました。」に見合ういかにも賢治的一首で、ご存じの嘉十飛びだしを用意する一首でもある。なお、結句「おえどし」の「お」には間投詞説も。

(盛岡大学学長)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします