2008年 1月 1日 (火) 

       

■ 〈岩手のIT産業を考える〉本県シェアわずか0.1%、戦略はあるのか

いつでもどこでも誰もがITの恩恵を受けるユビキタス社会が到来した。携帯電話、炊飯器といった身の回りの家電製品や自動車もITによって進化し続けている。暮らしもビジネスも、もはやIT抜きには考えられない。盛岡広域地域では産業の「顔」としてソフト系IT企業の集積を目指す産学官挙げた取り組みが広がっている。北上市を中心とした県南地域が自動車産業を中心とした「ものづくり産業」の集積を図っているのに対し、盛岡地域は製品の頭脳部分を担うソフトウエアの産業集積に力を入れようという戦略だ。しかし、国の調査によると、ソフトウエア業務全体の売上高のうち岩手の占める割合はわずか0・1%。地方がこの分野で頭角を現すのは容易ではない。本気で取り組まなければますます後れを取るIT産業。本県に確たるIT戦略はあるのか。現状をレポートする。

 盛岡地域は昨年10月、組み込みソフトとIT・システム関連産業の集積を目指す基本計画が国から認められ、企業立地促進法の支援対象地域となった。

  盛岡広域8市町村をはじめ、岩手大、県立大、いわて産業振興センター、盛岡工業クラブといった教育研究機関、産業団体など合わせて21団体が参加し盛岡広域地域産業活性化協議会(会長・谷藤裕明盛岡市長)を組織。▽立地企業の事業活動を支援するためのインキュベーションラボ、貸工場、貸事務所の整備▽産学官一体となった人材育成、技術支援のマッチング−などに取り組む。

  2011年度までの5年間で情報サービス業、関連製造業合わせて50件を立地させ、2250人の新規雇用の創出を目指す。付加価値額は05年度実績に対し14・2%増の928億円、製品出荷額は10・5%増の1854億円と大きな目標を掲げる。

  県によると、盛岡地域には、インターネット関連サービス、ソフトウエア業、情報処理サービスといったソフト系IT産業152社が集積。県内の同種産業の6割が集積しており、東北地方では仙台市に次いで多い。

  県立大や岩手大をはじめ、各種研究施設やインキュベート施設も充実。人材育成、産学官連携に恵まれた環境を生かしたいところだ。

  しかし、厳しい現実にも目を向ける必要がある。経済産業省の06年特定サービス産業実態調査によると、ソフトウエア業務全体の売上高は東京、神奈川、大阪、愛知、福岡の上位5県で84%のシェア。宮城で1・0%、岩手のシェア率はわずか0・1%に過ぎない。

  ソフトウエア開発の需要が高いメーカーの拠点工場や金融・保険業の本社が集中している上位5都府県に、付随してソフトウエア企業も集中しているのが現状だ。

  集積を目指すIT関連産業の中でも特に期待が寄せられているのが自動車や家電製品の働きを制御する「組み込みソフト」の開発。オートマチックトランスミッション(自動変速機)、自動販売機での釣り銭の計算、米をふっくらと炊きあげる熱加減など、かゆいところに手が届く製品の高度な働きは、すべて製品に組み込まれたソフトウエアでコントロールされている。

  組み込みソフトへの需要は右肩上がりだが、開発を手掛ける技術者は9万人から10万人の不足と言われる。開発拠点が集中する首都圏や東海地方の企業が技術者を求めて仙台、札幌など地方にも進出し始めた。最近、その余波が盛岡など中小の地方都市にも及んでいる。IT後進県の本県がのし上がるにはこの機を逃せない。


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