2008年 1月 3日 (木) 

       

■ 〈海外に飛躍する地場企業〉1 あさ開 SAKEは世界ブランド

     
  村井良隆あさ開社長  
 
村井良隆あさ開社長
 
  グローバル化の進展に伴い、盛岡市内でも海外と直接商取引する企業が増えている。輸入品を扱う企業が圧倒的だが、最近は輸出に着手する企業も目立ち始めた。時間をかけて力を付け国際舞台で活躍している。少子高齢化社会を背景に、新たな需要開拓のために海外展開を次のビジネスの柱にしようという動きでもある。商社を巧みに活用したり、商社を通さずに自前で貿易する企業や現地法人を設立した企業も出てきた。リスクを十分に検討しながら世界に出る。そんな地場企業は国際化を特別なことと考えていない。商習慣の違いを知り、貿易業務をクリアすれば国内で販売することと基本的には同じと考えている。今年、海外進出組はさらなる飛躍の年にしようと力を入れる。新たな企業が海外に打って出る動きも見られる。08年は地産外商の会社が増えそうだ。(大森不二夫記者)

 盛岡市大慈寺町の老舗酒造メーカー、あさ開(村井良隆社長)は今年で、海外展開を開始して11年目。村井社長(49)は昨年末に渡米して全国の同業社20社とアメリカに現地法人を立ち上げ副社長に就任した。今年は積極的に海外戦略を進め、あさ開ブランドを全米に広める。

  同社が海外に目を向けたのは96年。当時、日本酒の販売が下降し始めていた。日本が少子高齢化に入り始めた時期でもあった。村井社長は社長就任から3年目。将来を見据え何か手を打つ必要があると考えた。同じように危機感を持つ全国各地の酒蔵メーカーの若手経営者らと集まり打開策を話し合った。

  酒をくみ交わしながら「このままで推移すれば日本酒の需要減が一層進む。どうしたらよいか。次の世代に引き継ぐために」と議論を重ねた。その結果、海外への進出を考え出した。

  その後15社が出資して輸出のための組織を立ち上げた。「11年前だった。任意団体。15社で協同して自社の酒を輸出し販路開拓を目指した。ただし期間は10年間とした。10年間で芽が出なければ解散する。そんな組織だった」という。

  大手酒造メーカーと違うコンセプトとして「jizake(地酒)」でアピールを開始した。社長らが欧米に飛び、自ら法被を着てPRを開始した。酒の飲み方などの講習会、試飲会などを開催しPRと販路開拓に努めた。

  「みな初めての海外でのイベント。最初の1、2年はそんなイベントに追われ、各社のPRに力を入れた。ただ感触は良かった」という。

  当時、まだ今のような本格的な寿司(すし)ブームにはなっていなかったが、ニューヨークなどの大都市では徐々に浸透していた。「まだ生寿司を食べない時代だったが、地酒の評判は良くこれから日本食ブームになる」と見ていた。

  ただ日本酒には熱燗(あつかん)のイメージが定着していた。沸騰するほどの熱燗が出る店もあるなど、まだ酒の飲み方が浸透していない。村井社長は冷酒を輸出して新たな日本酒を浸透させた。口当たりのよい吟醸酒も持ち込んだ。

  「海外に販売してから7年間は赤字だった。しかし8年目からは黒字に転換。以来、毎年20%台の高い伸びを続けている」という。現在、14カ国に商品供給しているが北米での浸透が一番。「水神」が一番人気で「夢灯り」や「梅華音(かのん)」なども浸透している。

  「日本料理店から寿司店、焼き肉店などを中心に浸透している。メニューにも当社の酒が書かれている。ニューヨークの店には、あさ開だけを置く店も出てきた。モノを売るのでなくあさ開のよさ、ストーリーを売る。納得してもらう」という。

  「この10年間で欧米人が本格的に和食・生ものを食べるように変わってきた。ヘルシー志向の表れ。和食には日本酒が一番適していることも認識している」と市場浸透の背景を語る。

  昨年、任意団体発足から10年目を迎えた。今後どうするかを話し合った。4社は辞退した。残り11社と新たな9社が加わり20社でロサンゼルス市内に現地法人を設立することに決めた。出資金は約30万ドル(約3100万円)。

  昨年末、現地で設立総会が行われ村井社長も出席。新たな日系企業が誕生した。法人名は、Japan Culture Trade Orgnization.LLC(有限責任会社・日本文化貿易機関)。社長は大分県の八鹿酒造の麻生益直社長。副社長に村井社長が就任した。合わせてこれまで輸出代行を依頼した東京の会社を新法人の100%子会社とした。

  村井社長は「これからさらに本腰で攻める。現地の営業マンは5人でのスタート。これまで販路開拓を依頼していた。この10年で物流も冷凍技術も格段に進み、寿司をはじめとした和食は本格的なブーム。これから全米に広まるだろう。今はアツカンの日本語も通じる」という。

  同社では大連市内にも進出の準備を進めている。「海外進出にリスクは付き物。しかしリスクは見えない。9・11テロのとき当社社員がニューヨークにいて営業していた。無事だったが。リスクはどこにいてもある。今年はさらに果敢に攻め、近々海外事業を当社の柱の1本にしたい」と意欲を見せている。

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