2008年 1月 3日 (木) 

       

■ 〈賢治の歌〉978 望月善次 日の本は外ケ浜まで

 (蓬莱の秋)
  日の本は外ヶ浜まで落穂して風にかゞ
  やく菊の花かな
 
  〔現代語訳〕日本は、外ヶ浜まで落ち穂のある(秋の景色です)。(この気候を背景にして)風に輝いている菊の花ですねぇ。

  〔評釈〕「東北菊花品評会」五首中の三首目の「253歌」。同会短冊用の下書き原稿で、昭和六年ごろの作品か。「蓬莱の秋」は、おそらく出品菊作品の付けられた名。「蓬莱」には、秦の始皇帝による三神山の一の場合と、富士・熊野・熱田などの霊山・仙境の意味があるが、一応前者だとした。また「外ヶ浜」にも、「青森市から平館村に至る津軽半島の陸奥湾沿岸の古称説と西方の深浦・大戸瀬・鰺ヶ沢付近の日本海沿岸を言う説」とがあるが〔『広辞苑』〕、賢治が岩手県生まれだということを勘案して、一応前者だとした。「落穂」は、稲の刈り入れ後の散乱した穂。「落ち穂拾い」の言葉もある。いわゆる挨拶(あいさつ)歌のレベルを余り出ない作品であるが、「風にかゞやく菊の花」には賢治らしさの片りんはある。
(盛岡大学学長)


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