2008年 1月 10日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉985 望月善次 蕩児らと宮古にきたり

 蕩児らと宮古にきたり夜のそらのい
  とゞふかみに友をおもへり。
 
  〔現代語訳〕(この「東海岸視察団」の)放蕩(とう)児(ともいうべき)人たちと宮古に来ています。(放蕩集団の在り様を見るにつけても)夜の空が大変深く思われ、あなたのことが思われるのです。

  〔評釈〕大正六年七月二十九日付の保坂嘉内宛書簡〔書簡35〕に書かれた短歌六首の四首目。花巻実業人有志による「東海岸視察団」に同行してのものであることは昨日も触れた。話者を伝記上の「宮澤賢治」と限りなく近くすれば、「(酒ばかり食らっている)東海岸視察団」など「蕩児」以外の何者でもないとする若い賢治の憤懣(ふんまん)やるかたない口吻(こうふん)が伝わってくる。「夜のそらのいとゞふかみ」は、もちろん物理的にもそう見えたのであろうが、心理的なものも少なくないと見た。こんな「遊蕩」の輩(やから)を見るにつけても、高等農林学校の友人たちのことが思われたであろう。もちろん「友」は一般的な友ではない。書簡であるから、当然嘉内は直接の対象となる。受け取る相手の嘉内の感激のことも思われた。

(盛岡大学学長)

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