2008年 1月 15日 (火) 

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉35 及川彩子 石の街に美の本質

 イタリア中部のトスカーナ地方に旅した折、ウルビーノという古都に立ち寄りました。城壁で囲まれた、丘の上の典型的な中世の街で、すそ野にオリーブとブドウ畑が広がります。

  イタリアにはシエナやアッシジのような観光名所の古都だけでなく、昔の姿を留める小都市が、あちこちに残っているのです。

     
   
     
  城門前に車を止め、石畳の道を街の中心地ドウモに向かうと、市庁舎と市民憩いの広場がありました。私の住むアジアゴもそうですが、古い街はどこも、ドウモを中心に街が広がっているので、地図がなくても歩けます。

  でもこの街は、一歩裏通りに入ると昼でも暗く、しかも迷路のような細道。その両側に整然と並ぶ石造りの高い建物〔写真〕と、直角の曲がり角。見上げる空は四角形。温かい民家の気配も、生活の匂(にお)いもありません。

  旧王宮を利用した美術館に立ち寄ると「理想の街」と題したルネッサンス時代の絵画がありました。

  丸屋根の教会を中心に定規を当てたような街並みが、淡い青や黄の色使いで描かれ、重々しい建物群がとても輝いて見えました。幾何学によるこの街の絵は、今でも建築家のお手本なのだそうです。

  古代エジプトの傑作は正四面体のピラミッド。その正方形は大地を、三角形は天を意味し、その調和で「永遠なる魂の旅」を表現したのだと言われています。

  昔から石は永遠の象徴。「人間は必然的に幾何学を望む」と言ったフランスの学者がいますが、これは幾何学が人間と調和した時「美」が生まれると言う西欧の発想なのです。

  15世紀末、この街で生まれた画家ラファエロはミケランジェロやダ・ビンチの後を受け、神中心から人間中心の理想的な美の世界を完成させました。そのしなやかで親しみのある聖母子像は、あまりにも有名です。

  一見冷たい幾何学の石の街に、イタリアの美の本質を垣間見たような気がしました。

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