2008年 1月 18日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉993 望月善次 天狗巣の花はことさら

 天狗巣の花はことさらあはれなり
  ほそぼそのびしさくらの梢。
 
  〔現代語訳〕天狗巣(てんぐす)病の花は、本当に可哀相です。(病気によって)細々と伸びた桜の梢(こずえ)なのです。

  〔評釈〕保坂嘉内宛書簡〔大正八年五月二日、書簡145〕に書かれた短歌四首のうちの四首目。「天狗巣病」の名称は、「病患部から多くの細い枝が出て、天狗の巣のような症状」を呈することに由来するという。(欧米には「魔女の箒(ほうき)=witches’broom=の呼称もあるという。)またその種類にも「1.マイコプラズマ様微生物の寄生 2.子嚢菌類のタフリナの寄生 3.担子菌類サビ菌目の菌の寄生 4.担子菌類餅病菌の寄生」などがあり、桜は「2.」〔いずれも『日本大百科全書』〕。話者が、天狗巣病にかかった桜に同情的なのは「ことさらあはれなり」の中に、少し露わ過ぎる形で示されている。「ほそぼそのびしさくらの梢」の描写は、正に天狗巣病の説明そのもので自然科学者の目も光る。

(盛岡大学学長)

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