うまはみなあかるき丘に
ひらかれし戸口のぞみて
ひとみうるめり。
〔現代語訳〕馬はみんな明るい丘に(向かって)開かれた戸口を望んで瞳が潤んでいます。
〔評釈〕保坂嘉内宛書簡〔大正八年五月二日、書簡145〕に書かれた短歌三首のうちの一首目。短歌に先立つ手紙本文には、「あの我儘(わがまま)な保坂さんがすっかりしょげてしまった像がどこかへ行ってしまひ何年か北上山地のなめらかな青い草をたべた馬が愉快に動き廻っているのが見えるやうです。……すこしの残雪は春信の版画のやうにかゞやき、そらはかゞやき丘はかゞやき、やどりぎのみはかゞやき、午前十時ころまでは馬はみなうまやのなかにゐます。ととのはないものですが外山の四月のうたです。」などとあり、短歌自身のインデックスにもなっている。それにしても、この美しい書簡文に比べると、どうも肝心な短歌の方がそれについて行けないで見劣りがするのではないかというのが評者の見解。
(盛岡大学学長)
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