2008年 2月 3日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉1009 望月善次 アナロナビクナビ睡たく

 アナロナビクナビ睡たく桐咲きて
  峡に瘧のやまひつたはる
 
  〔現代語訳〕アナロナビクナビ(火神よ、歌神よ、醜悪なる神よ)眠たそうに桐の花が咲く季節、この山間には、瘧(おこり、マラリヤ性熱病)が伝染し始めました。

  〔評釈〕「祭日」〔二〕、『文語詩未定稿』の短歌形四連のうちの一。(四連構成については、漢詩の「起承転結」をもイメージしたかは一論点)「文語詩」における「短歌形」が持つ意味については、既に取り上げた「日の出前」の問題と重なろう。また、本作品の先駆形は、短歌形ではないが、この点も「日の出前」と共通する。「祭日」は、成島の毘沙門天(多聞天、日本では多く北方神。賢治にとっては西域憧憬に通じる一つ)がモデル。「アナロナビクナビ」は、以下の作品と同じく「法華経陀羅尼品(だらにほん)第二十六」にある毘沙門天の「陀羅尼(割合長めの呪文)」を賢治が尻取り的に四句仕立てとしたもの〔いずれも『新宮澤賢治語彙辞典』〕。一応の意味は添えるが、音感こそが命。

(盛岡大学学長)

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