2008年 2月 4日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉1010 望月善次 ナビクナビアリナリ赤き

 ナビクナビアリナリ赤き幡もちて
  草の峠を越ゆる母たち
 
  〔現代語訳〕ナビクナビアリナリ(醜悪なる神よ? 歌神よ、富める者よ、踊る者よ)ああ、(この毘沙門天に参るために)赤い旗をもって、草がいっぱいの峠を越えて来る母親たちよ。

  〔評釈〕「祭日」〔二〕、『文語詩未定稿』の短歌形四連のうちの二連目。「文語詩」における短歌形の意味や、非短歌形から短歌形への推敲(すいこう)については、既に述べているので繰り返さない。「ナビクナビ」の「ナビク」は相当する原語が分からなかったので、「クナビ」に相当する「醜悪なる神よ」を一応あてておいた。第一連においては、伝染性の「瘧(おこり)」の発生について述べ、それに次ぐこの第二連では、それを聞いて「草深い」峠を越えて毘沙門天のもとへ詣る母親たちについて歌っている。「ナビクナビアリナリ」と九音とし、短歌形式における初句分の五音と第二句分の四音を用い、実質的な意味をもつ「赤き」と組み合わせて、第二句を形成するところなどに、賢治の文語的センスが光る。

(盛岡大学学長)

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