■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉204 八木淳一郎 デンチュウでござる(その1)
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とは申しましても、あの忠臣戴の松の廊下の出来事ではござりませぬ。あのデンチュウは言うまでもなく「殿中」。しかして、このたびの表題のデンチュウとは「電柱」のことでござりまする、おのおのがた。
星仲間の某氏の住まいのことでございます。隣の空き地を某不動産会社から、某建設会社が購入したのでした。ある日のこと、唐突に「近いうちにお宅との境界に電柱を移します」と請負工事屋さんから電話があったのだとか。彼が今の住まいを購入する際、観測施設をつくって、そこで星の観測や、年ごとの空の明るさの変化を仲間と一緒に測定して環境省に報告する、といった計画を立てており、実現を間近にしていました。土地を決める際、隣も選択肢の一つでしたが、巨大な電柱が視界の妨げになることから、今の場所を選んだいきさつがあったのでした。あろうことか、その巨大な建造物がすぐ間近にせまってくることになるとは。
わかったことは、歩道の無い所では、電柱は私有地を有償で借りて電力会社なりが立てなければいけないということ。しかも、地主の都合で同じ私有地の中であれば移動が許される。けれど、大きな建造物でもあり、もともと公共性の強い物体ですから、すでに生活を営んでいる隣家にぴったりと寄り添うような場合など、いくら自分の敷地の中のこととはいえ、事前に話をして了解を得るようにするのが一般的マナーということでした。彼は全国の同じような事例を調べてみたのでした。
私有地の中のもの。とはいえ、電柱は庭木などとは違い公共性のあるもの。その所有者である電力会社は公共性のある立場。けれどもあくまで私企業。しかも独占的な。こうしてみると、なんとデリケートな物でありましょう、一本の電柱は。交通の妨げにもなり、広告や電線ともども街の美観をそこね、それでも、公共の役に立っているのだ文句は許さん、とばかりに立ちはだかっている、ああ、デンチュウよ…。何か歌でも出来そうです。
さあ、そこでです、建設会社様。素人相手に、と知らん振りを決め込んだり、権利を振りかざしたり、どっちみち自分たちの思い通りになるんだから話し合うなど無駄なこと、というのではあまりに横暴が過ぎます。建設会社様の「快適な住まいを提供する云々…」たるコピーは、もっと大きな視点で使ってもらいたいのが人情です。そこに移り住んできた人とはお隣同士の長いお付き合いにもなること。そういうところにも心をくだくのがプロとしての技量の一つでもありましょう。
(つづく)
(盛岡天文同好会会員)
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