2008年 2月 6日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉1012 望月善次 アナロナビクナビ踏まるる

 アナロナビクナビ踏まるゝ天の邪鬼
  四方につゝどり鳴きどよむなり
 
  〔現代語訳〕アナロナビクナビ(火神よ、歌神よ、醜悪なる歌神よ)、(毘沙門天に)踏まれている天の邪鬼よ。(毘沙門天を収めている御堂の)四方は、筒鳥の声で満ちています。

  〔評釈〕「祭日」〔二〕、『文語詩未定稿』の短歌形四連のうちの四連目。「文語詩」における短歌形の意味や、非短歌形から短歌形への推敲(すいこう)については、既に述べているので繰り返さない。「つゝどり(筒鳥)」は、ホトトギス目の鳥。「ポポ、ポポと竹筒をたたくようなよくとおる太い声で鳴く。」〔『マイペディア』〕。賢治作品にもしばしば現れる。ところで、成島の毘沙門天像は、坂上田村麻呂由来のものだが、その実際は西域の兜跋(とばつ)国に出現したという「兜跋毘沙門天」である。兜跋毘沙門天においては、地神(大地の女神)がこれを支えており、天邪鬼を踏みつける形式ではない。(天邪鬼は脇に置かれている。)しかし、こうした事実とは別に、作品としては、これで完結している。

   (盛岡大学学長)

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