2008年 2月 7日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉1013 望月善次 まどろみの、山の絵巻きの

 まどろみの、山の絵巻の、みどりこ
  そ、つかれしこゝろ、なぐさむもの
  ぞ。
 
  〔現代語訳〕うとうととする中での、絵巻のような山の緑こそ疲れた心を慰めるものです。

  〔評釈〕『校友会会報』第三十二号A中の全二十九首中の十八首目。「まどろむ(微睡む)」は、「目(ま)蕩(とろ)む」から「うとうとと眠る・少しの間眠る」の意となる〔『広辞苑』〕。解釈のポイントは、「山の絵巻」を「絵巻物の山」とするか、現前の山を「絵巻物のよう」だとする比喩(ゆ)と見るかの点であろう。直前の十七首目に置かれている「山の藍、空のひゞわれ、草の穂と、思ひきたらば、泣かざらめやは。」と直後の十九首目に置かれている「大使館、低き煉瓦の、塀に降る、並木桜の朝の病葉(わくらば)。」から、「現前の山」を「絵巻物」のようだとする比喩的表現だとした。作品としての一首の出来は、ある事物を平凡に言っただけの作品だと見た。「歌稿」からの脱落も当然と見た。

(盛岡大学学長)

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