2008年 2月 8日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉1014 望月善次 錦町、もやを通れる晨光の

 錦町、もやを通れる晨光の、しみ〓〓注ぐ、プラタヌスかな。
 
  〔現代語訳〕錦町よ。靄(もや)を通って来る朝の光がしみじみと注ぐプラタナスですねぇ。

  〔評釈〕『校友会会報』第三十二号A、全二十九首中の二十首目。前後に置かれた作品からすれば、賢治の上京体験〔大正五年七月三十日の上京、「独逸語夏季講習会」(東京独逸学院)受講〕に対応する。「錦町」も東京のそれ。「晨」は「日+辰(「つとめる」から「早朝」の意)」で「朝・夜明け・早朝」などの意。「晨光」の訓(よ)みは「シンコウ」で、言うまでもなく「シン」の音は「辰」の部分にある。「プラタヌス」は「platanus」のドイツ語読み。ラテン語等では「プラタナス」で、和名「スズカケ(鈴懸・篠懸)」であるが、ドイツ語講習会中の賢治なら当然ドイツ語訓みか。「しみ〓〓注ぐ」の結合比喩(ゆ)は賢治の基本的方法。この平凡な自然描写と見える一首にも、話者の関心の在り処(か)は明白。

(盛岡大学学長)

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