いざともに、うたがひをやめ、さか
しらの、地をばかゞやく、そらと、
なさずや。
〔現代語訳〕さあ一緒に、疑うことを止めて、この分別ありげな地を、輝く空(を持つ)地にしようではありませんか。
〔評釈〕『校友会会報』第三十三号A、「雲ひくき峠等」全一四首中の最終歌。全一四首中の十三首は、「歌稿」に採られているのに、この一首のみが採られていない。「いざ」は「さあ、と他人に行動を促したり、どれ、と自分で何かをしようとする時に発する語。(「いさ」とは別の語)」。「さかしら」は「賢し+ら(状態を表す接尾語)」で「利口ぶった、分別ありげな」等の意〔共に『全訳例解古語辞典』〕。「さかしらの地」の結合比喩(ゆ)などには賢治らしいところもあるのだが、「向日性」に満ちた、あまりの断言的な物言いが、「歌稿」を纏(まと)める際の心情や他の作品との調子等と合致しなかったのだと言えよう。
(盛岡大学学長)
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