2008年 2月 11日 (月) 

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉37 及川彩子 フラメンコの心

 スペインといえば「フラメンコ」。わたしの住むイタリアはオペラの国ですが、舞踏はクラシックバレエが主流です。

  ナポリ地方の躍動感あふれる「タランテラ」、シチリアの憂いある「シチリアーナ」など、イタリア生まれの舞曲は数多くありますが、フラメンコのような民族色の濃い舞踊はありません。

     
   
     
  そのイタリアで近年人気なのが各国の民族舞踊。フラメンコをはじめ、アラブ諸国、エジプトなどの民族ダンス教室は、どこも若者でいっぱいと聞きました。

  友人で、クラリネット奏者のサラも数カ月前からフラメンコを習い始めた一人です。彼女によると「音楽のルーツはすべて踊り。フラメンコのステップを学んでいると、理屈抜きに、表現の本質が見えてくる」のだそうです。

  去年の暮れから1週間、家族旅行で南スペインを訪れました。赤茶色の大地に果てしなく続くオリーブ畑、「千夜一夜物語」に入り込んだようなグラナダのアルハンブラ宮殿…その下町の狭い洞窟(くつ)住宅街にフラメンコの舞踊場がありました〔写真〕。

  かすれた地声を搾り出すような歌に合わせてかき鳴らすギター。音楽の美に背を向けたようなリズム。パチパチパチと鳴る甲高い手拍子、タッタッタッと刻む激しいステップ、手や足の鋭い振り…。

  故郷への思いか、人生のやるせなさか、歌の意味は分かりませんが、魂の叫びのような表現に、サラの言葉を理解したのです。

  フラメンコは、モロッコジプシーの踊りが発祥。それが南スペインで花開きました。北アフリカやヨーロッパをさまようジプシーたちを、今も田舎道などで見かけます。キャンピングカーを止め、森の木々に洗濯物を旗めかせて集う天衣無縫の姿。ジプシーは、いまだ伝説の民ではないのです。

  若者たちの心をとらえるフラメンコ。現代のさまよう心を訴えたいのかもしれません。

  (盛岡市出身、イタリア・アジアゴ在住)

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