2008年 2月 13日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉1018 望月善次 雪きれよ、ヒノキは黒く

 雲きれよ ひのきはくろく延びたちて
  なかにたくらむ 連れ(つれ)行け、
  よわぼし
 
  〔現代語訳〕(かかっている)雲よ切れてください。檜は、(この暗がりの中に)黒く(枝を)延ばして、立っています。(この檜は薄暗がりの)中に、何かたくらんでいるのでしょう。かすかに見える弱い星よ、(この檜を)連れて行ってください。

  〔評釈〕『アザリア』第一号の「みふゆのひのき」十二首中の七首目。(末尾には「大正六年二月中」の注記。)『アザリア』は、ご存じ、賢治達が盛岡高等農林学校時代に出した同人誌。同人十二人にして、中心は、賢治の他、小菅健吉・河本義行・保坂嘉内の四名。この一連は、「歌稿〔A〕」では「ひのきの歌」となり、「七日+x日」構成となり、「歌稿〔B〕」においては、「七日+x日」構成は変わりがないものの、題名は消える。「七日+x日」構成への変化は、大変化ではあるが、並列順はほとんど崩しておらず、「賢治短歌連作論」からも絶好の考察対象。抽出歌は、「脱落歌」に当たるが、第四句を中心として意味が分かりにくく、「現代語訳」では思い切った補充をしたので批判を得たい。

(盛岡大学学長)

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