2008年 2月 16日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉1021 望月善次 沼森は山々つくる

 沼森は 山々つくる 野に 立ちて
  所々にはげつゝ 陽(ひ)に けぶ
  りけり。
 
  〔現代語訳〕沼森は、山々を作っています。野原の中にあって、所々に剥げているところがあって陽に煙っています。

  〔評釈〕『校友会会報』第三十四号に「銀縞」で掲載された「箱が森七つ森等」十三首中の十一首目であるが、「歌稿」からは脱落している。「沼森」は「箱が森」や「七つ森」近くの山。初期短編「沼森」には、「はてな、あいつが沼森か、沼森だ。坊主頭め、山山は集ひて青き原をなすさてその上の丘のさびしさ。ふん沼森め。……沼森がすぐ前に立ってゐる。やっぱりこれも岩頸だ。」などとある。第四句の「所々にはげつゝ」は、一応は「坊主頭」と対応するか。「山々つくる」も、必ずしも分かり易い表現ではないが、先に挙げた、「短歌体」の「山山は集ひて青き原をなすさてその上の丘のさびしさ」(他日取り上げたい)に対応するものであろうか。こうした分かりにくさも、「脱落歌」の一因か。
(盛岡大学学長)

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