■ 〈胡堂の父からの手紙〉151 八重嶋勲 来る冬期休日は帰郷できるや
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■209半紙 明治39年12月9日付
宛 東京市小石川区高田老松町二十八番
地吉田方
発 陸中国紫波郡彦部村
前略其後何等変リタルコト無之哉、当分ハ皆無事ナリ、御安心可相成候、
来ル冬期休日ハ帰國シ得ルヤ、旅費ニテ下宿屋ノ費其他在京費用ト同様或ハ一二円起過スルモ久保ノ俶(叔)父様帰ルモノナラ同時ニ帰ルモ可然、夫共五六円以上モ増シ(ス)モノトセハ敢テ帰國ヲ促シ(ス)次第ニモ無之候、此利害取調回報スベシ、帰國ス御都合ナラ何日何時ト豫メ報告スベシ、
図書縦覧所ヨリ送付セラルタル新聞送付料貮円ハ八重島(嶋)ニ相戻シ、此金ヲ土台トシテ同所ニ百科全書購買致度斗(計)画モ有之候、就テハ古本屋ニテ古本(百科全書)買受得ル丈集メナキモノヲ博文館ヨリ購入スル方可然トノ相談相成タル由、就テハ今ヨリ古本屋ニ注意シ、有無價格トモ略等取調相成被置度候、
目下右書籍ト彦部学校ニオルカン壹台(六七十円ノ品)購入ノ為メ有志者寄附募集中ナリ、オルカンハ未タ注文不致候得共廣告一覧表ヨリ見ルニ第九号五十八円位ハ適当カト被存候、運賃約八円斗(計)之由、購入スルトキハ店頭ニ就キ同種類ノ内音楽ニ達シタル人ニ監定受クルトキ尤完全ナル由ニ付注文スルトキハ店名ヲ確メニ三週間モ前ニ通知可致、其際ハ監定人ナキトキハ壱人ニテモ差支ナシ、物品ニ目標ヲ付ケ選定品ヲ購入スル様可致候、(オルカンハ同價格ニテモ音ノ差大ニアリト又音聲高キニ過キ調子ノ不都合ナルモアリト)、又買受クル際ハ盛岡邊ノ商人ノ手ニ委ヌルトキハ一割以上ノ引金有之由、其邊モ被聞度候、果シテ引金アルトキハ原價ニテ受領証ヲ徴スル様可致候、是レニ関スル一切ノ書類ハ(手紙)引金ノコトハ別紙ニ認メ送付スベシ、
学校ノ方ハ可相成一日早々ヨリ寄宿舎ニ立戻ル方可然候、右用事、早々
十二月九日 野村長四郎
長一殿
【解説】「前略、その後何ら変わったことがない。皆無事であるので安心するように。
来る冬期休日は帰郷できるや。旅費で下宿屋の費用、その他在京費用と同様あるいは1、2円多すぎるも、佐比内村屋号久保ノ叔父(母方)様帰るものなら、一緒に帰るのもよいだろう。それとも5、6円以上も多くなるものとせば、あえて帰郷を促すものではない。そのどちらが得か調べて知らせよ。帰郷する都合なら何日何時と予め知らすべし。
図書縦覧所から送付された新聞送付料2円は八重嶋茂に戻し、この金を土台として、同所に百科全書を購入したい計画もあり、ついては古本屋で百科全書の古本を買い集め、無いものは博文館から購入する方がよいとの相談をしているとのこと。ついては今より古本屋で注意してみて、有無、価格とも概略調べておくようにしてもらいたい。
目下、右書籍と彦部尋常小学校にオルガン1台(6、70円の物)購入のため、有志者の寄付を募集中である。オルガンはまだ注文していないが、広告一覧表で見るに、第9号、58円位が適当かと思っている。運賃約8円ばかりという。購入するときは店頭で同種類の内から音楽に詳しい人に監定してもらうのがよいということであるので、注文するときは店名を確め、2、3週間も前に知らせる。その際、監定する人がいない時は、長一が選んでも差支えない。物品に目標を付け選定品を購入するようにせよ。(オルガンは同価格でも音の差が大いにあり、また音が高すぎて調子に不都合なものがあるという)
また買い受ける際は盛岡辺の商人の手に委ねる時は1割以上の割引があるとのこと。その辺も聞いて欲しい。果して割引ある時は原価で受領証をもらうようにせよ。これに関する一切の手紙では、割引のことは別紙に書いて送付すべし。
学校の方はなるべく1月早々から寄宿舎に戻る方がよいと思う。右用事、早々」という内容。
彦部尋常小学校の百科事典やオルガンの購入など、盛んに小学校の物品の整備を行っている様子がうかがわれる。そして、その購入に当たっては、東京在住の長一の立場を大いに利用しているのである。
もしかして、私が昭和20年、同小学校(国民学校といった)に入学したころにあった、大変古びて音の重々しいオルガンが、そのものだったのかもしれない。
そして昭和26年、私が6年生の時、彦部小学校に野村胡堂が寄贈(実は購入基金を寄付)したピアノが届いた。オルガンと違って弾む音で、唱歌を歌った感動を今でもありありと覚えている。不思議な縁を感じる。
そのピアノは今、野村胡堂・あらえびす記念館のロビーに飾ってあり、ちゃんと音が出るのである。
(岩手県歌人クラブ副会長兼事務局長) |
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