2008年 2月 19日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉1024 望月善次 春過ぎて輝きわたる

 春すぎて かがやきわたる あめつ
  ちに わかものたちは たゞ身を愛
  す。
 
  〔現代語訳〕春が過ぎて、一面輝くこの宇宙に、若者たちは、ただ、自分自身のことだけを愛するのです。

  〔評釈〕『校友会会報』第三十四号の、「銀縞」名の「黎明のうち」九首中の七首目であるが、「歌稿」からは脱落している(「歌稿〔B〕」では一連全て削除)。前後には、「あめつちに たゞちりほども 菩薩たち われらがために 死し給はざる無し。」〔440歌原歌〕、「ひたすらに をみなを得んとつとむるは まことに強き をのこの業か。」〔480歌原歌〕を置いていることからも分かるように一連は、「真の男子」たるものについての作品。直前の「440歌原歌」からは、「自身を越えて死ぬ」〈菩薩〉に対し、自分自身を愛するだけの「若者」達を対比していることになる。菩薩達の慈悲の広大さや「男子たることの真面目」を歌う気恥ずかしさ、違和感が、後年の「削除」の一因か。

(盛岡大学学長)

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