熱滋くこゝろわびしむ、はれぞらを、
好摩に土をとりに行くとて
〔現代語訳〕(病いの為の)熱があり、心細いのです。晴れた空のもと、好摩に土を取りに行くのですが。
〔評釈〕「好摩の土」十首〔『アザリア』第四号〕の冒頭歌。一連十首のうち、「歌稿」に採られなかった作品四首の一つ。「滋(しげ)く」は、終止形の形で漢字を示せば、多く「繁し・茂し」。原義は「空間的・時間的に、物事が次から次へと生起し、相互に密着してすきまのない」意で、抽出歌に即して言えば、程度の甚だしいこと。つまり、熱が高いのである。この熱が病気の熱であることは、一首飛んで置かれている「624歌」の原歌に「疾みたれど、いまはよろこび身にあまりなみだはそらの黄薔薇をひたす、」とあるところから断定できる。「好摩」は、現在は盛岡市となっている地名だが、県外的説明なら、「啄木の故郷、渋民に近く、当時の啄木が乗り降りしていた駅があった所」となる。
(盛岡大学学長) |