2008年 3月 3日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉1037望月善次 まだきとて、キキョウの空の

 まだきとて桔梗のそらの底びかり、
  仮停車場のゆがむ窓より、
 
  〔現代語訳〕早朝だから、桔梗色の空は底光りをしています。仮停車場の歪(ゆが)んでいる窓から眺めると。

  〔評釈〕「好摩の土」十首〔『アザリア』第四号〕の冒頭歌。一連十首のうち、「歌稿」に採られなかった作品四首のうちの一つ。「まだき(未だき・夙)」は、この語自体は、「それ自身に達していない」、「すでに」、「もう」などの意味であるが、「朝まだき」の形で「早朝」の意味を示すことがあるので、抽出歌においてはそうした意味となろう。〔前に置かれた「628歌」原歌の「やなぎよりよろこびきたり、あかつきの、古川に湧くmarsh gaかな」はその証左。〕早朝の朝を「桔梗」や「底光り」をもって表すのは、童話「いてふの実」、「インドラの網」などにも見られる。「ゆがむ窓」は、窓自体が古くて歪んでいたのか、当時のガラスの関係で、こうした表現にしたのかは、断定が難しい

(盛岡大学学長)

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