2008年 3月 4日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉1038 望月善次 雪降れば昔の心

 雪ふればむかしのこゝろ、ほのぼの
  とそらより土ににほひ入るかな、
 
  〔現代語訳〕雪が降ったので、昔の心は、ほんのり明るくと、空から土に匂いながら入ったのですねぇ。

  〔評釈〕「好摩の土」〔『アザリア』第四号〕十首の八首目で、「歌稿」には採られていないもの。「ほのぼの(仄仄)」は、「あけぼののうす明るいさま」が本来の意味で、そこから「うすぼんやりとしたさま」や「ほんのりと心が暖まるさま」が発生する〔『岩波古語辞典』&『広辞苑』〕。「現代語訳」では、こうした意味を共に生かす形にしておいた。一方らかすれは、取り立てて云々するほどの作品ではないのだが(だから、賢治も「歌稿」から外したのだろう。)、「雪」と共に、「昔のこころ」が「ほのぼの」と、「土」に、「匂い入った」などは、いかにも賢治らしい。比喩的にも「昔VSこゝろ」、「(こゝろ)VSにほひ入る」は、結合比喩(ゆ)となっていて、この点でも賢治的な作品となっている。

  (盛岡大学学長)

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