2008年 3月 7日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉1041 望月善次 杉林、険しき雪のがけを

 杉ばやし
  けはしきゆきのがけをよぢ
  こゝろのくるしさに
  なみだながせり。
 
  〔現代語訳〕杉林の険しい、雪が積もっている崖(がけ)をよじ登り、心の苦しさに涙を流したのです。

  〔評釈〕「冬のスケッチ」三七の四区切りの四つめに相当する。やはり、短歌形式に沿って音数を確認すると、五七五九五となる。やはり、問題となるのは第四句の字余りであろう。しかし、抽出作品においても、全体が五つの句の積み重ねだと判断でき、また第四句の九音を除いて、他の句が定型を守っているから、これも作者本人の意図を別にして、この部分を「短歌」と認定することが一般的であろう。一首の内容としては、「こゝろのくるしさに」が注目点となろう。「雪が積もっている(溶け残っている)険しい崖」を攀(よ)じ登ることは、非常に大変なことだと想像できる。しかし、話者は、自分の本当の辛(つら)さは、そうした肉体的なことではない、それ以上の心の苦しみがあることを告げたいのである。

  (盛岡大学学長)

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