2008年 3月 8日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉1042 望月善次 めまぐるき光のうつろ

 眩ぐるき
  ひかりのうつろ
  のびたちて
  いちじくゆるゝ
  天狗巣のよもぎ。
 
  〔現代語訳〕まぶしいほどの光の空洞が伸びるように立ち、(その光の中で)テングス病のようにぼうぼうとしたヨモギが非常に揺れています。

  〔評釈〕「冬のスケッチ」三八の五区切りの二つ目。「歌稿〔B〕」欄外の「811c歌」にも「めまぐるきひかりのうつろのびたちて/いちゞくゆるゝ天狗巣のよもぎ」とほとんど同じ形である。『新宮澤賢治語彙辞典』の「よもぎ」の項目でも挙げているが、難解歌。「眩ぐるき」は、「811c歌」を参考にして「めまぐるき」と訓(よ)んだが、「めまぐるしき」を詰めた誤記であろう。同様に「いちじく」も「いちじるしく(著しく)」を詰めたとしたのが、「現代語訳」の立場であるが、特に「いちじく/著しく」の関連はいかにも苦しく、通常は「いちじく」は「無花果」とすべきものであろう。しかし、こうした無理を犯すほど、一首全体を達意のものとすることが困難な作品だったというのが結論。
(盛岡大学学長)

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