2008年 3月 11日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉1045 空の椀ほのぼのとして

 そらの椀
  ほのぼのとして青びかり
  気圏の底にすぎとなづくる(青きい
  きものら
  さんさんといきづき 葉をゆする)
 
  〔現代語訳〕椀(わん)のような空は、ほのぼのと青く光っています。(私は)気圏の底にいて、その光っているものを杉と名付けるのです。(青い生き物であるその杉は、陽の光に燦燦と息づいて、葉を揺すっています。)

  〔評釈〕「冬のスケッチ」四〇の五区切りの三つめの冒頭部分。昨日に続いて、普通から言えば、短歌とは呼べないものを取り上げているわけであり、抽出作品も、この部分がたまたま短歌の形とも合致しているに過ぎないと言ってしまった方が、抽出意図を誤解されるところが少ないかもしれない。さて、短歌に相当する部分の音数を確認してみると五七五七七となり、短歌定型を完全に守っている。しかし、この部分に続く「青きいきものら/さんさんといきづき 葉をゆする」は「八九五」となっていて、特に八音と九音の部分は、短歌定型が基本とする五音や七音からは遠く、短歌のみではなく、文語そのものから離れようとする姿勢がほの見える。意味の上では、初句「そらの椀」に、不分明な点が残る。

(盛岡大学学長)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします