2008年 3月 12日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉1046 望月善次 空の碗げにも空しく

 そらの碗
  げにもむなしくそこびかり
  杉はまさしく青のいきもの
  〔額(ぬか)くらみ。〕
 
  〔現代語訳〕お椀のような空は、何もない空洞で、(その空の下に在る)杉は正に青い生き物で〔(その素晴らしさに)額がくらくらとするほどです。〕

  〔評釈〕「冬のスケッチ」四〇の五区切りの四つ目の全文。ここでも、短歌としての認定の境界線上の作品を取り上げたい。抽出した部分に限って言えば、「そらの碗/げにもむなしくそこびかり/杉はまさしく青のいきもの」は、音数的には五七五七七となっているから、短歌そのものだと言っても良い。しかし、もちろん、その後には「額(ぬか)くらみ」がついているわけで、「五区切りの四つめ」全体としては、もちろん短歌とは言えない形となっている。また、意味の上では「そらの碗」を「お椀のような空」と解釈し、その空が空洞なのだとし、その空の下に杉があるのだとした。評者として何とか作品全体の意味を通らせようとした結果であり、無論、他の解釈の可能性を否定するものではない。

(盛岡大学学長)

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