■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉77 鎌倉森(かまくらもり、1317メートル)
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その白い帯に気づいたのは網張スキー場で滑っているときだった。犬倉山の南東、鎌倉森の頂上から冬季限定の白い一本のラインが描かれる。ゲレンデの私を手招きするかのように、時々そいつはギラリッと光った。
鎌倉森は網張元湯の湯ノ沢と有根沢に挟まれた長い尾根を南に流していた。登山ルートはないが、地形が単純でわかりやすい。それにしても、どうして「鎌」なの?−−不思議だった。
「あした鎌倉、行くよ!」電話は唐突だったが弥市さんは私のつぶやきに気をかけてくれたのだ。こんなありがたい申し出を断わる手はない。
鎌倉森へは、標高760メートルの網張ビジターセンターから出発する。センターと反対方向へ下り、キャンプ場の管理棟から北の方角へ一直線に登っていく。
辺りは太いブナやナラの林だ。歩き始めて1時間、標高が1000メートルを過ぎたころ、「お尻に挟んだ枝だよ〜!」と、先を行く弥市さんの声がいきなり降ってきた。なにごとかと見上げると、1本のナラの木に熊棚があった。それも5カ所ある。いまクマは冬眠中だ。その間、そっと鎌倉森へ入らせてもらおう。私はなにやら優しい気分になって木の下を通過した。
標高1200メートル、足元から吹きあがるスキー場の軽快なメロディーが騒々しい。湯ノ沢は大きく雪庇(せっぴ)を張りだして、ところどころに雪崩の跡を残していた。吸い込まれていくようなゾッとする光景だった。
斜度を増しながらも、尾根幅は知らぬまに狭まっていく。ここいらはワカンの歯がきかず、少し手こずる斜面である。4本か6本爪の軽アイゼンを着ける方が、下る時もなお滑らず重宝するだろう。
やがて右手の白い斜面に上がるが、そこは幅5〜10メートル、長さ100メートルとも150メートルともありそうな雪庇だ。尾根は鎌の刃のように鋭く、左右に落ちこんでいる。容赦ない西風にたたかれ、尾根の東側に長いタテ状の雪庇を形成。私はここにきて初めて、鎌倉森のカマは『カマ尾根』を指す言葉であった、と実感できた。
遮るものがない頂上の展望は、それゆえ圧巻だ。岩手山の南斜面は大スクリーンになって目の前に迫ってくる。山頂から1時間で犬倉山を往復できるし、好天ならばさらにそのまま網張スキー場へ抜けるミニ縦走も楽しいだろう。
バスの便もよく、温泉やビジターセンターなどの好条件がそろう鎌倉森は、冬にこそ計画する一山だ。雪面が安定していれば、登り2時間・下り1時間で往復するが、雪や天気の状態に大きく左右される。
「鎌」の正体をつかんだ今、私はとても気分よく滑っている。 |
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