2008年 3月 16日 (日) 

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉155 八重嶋勲 「いかがな気持ちか理解し難い」

 ■214半紙 明治40年2月26日付

宛 東京市小石川区高田老松町二十八・
             吉田方止宿
発 岩手縣紫波郡彦部村
前畧愈々無事通学罷在候由先以テ大慶ニ候、当方無事ナリ安心被下度候、今回金拾七円送付スヘキコト被申越候得共殆ント金策ニ困難ヲ極メ当月中ニハ到底送金六ツヶ敷候、次ニ当月四日頃三十三円送金セシ二ヶ月間ニ八拾円ノ金額費途何何ナル理由ナルヤ、実ニ多額ニ驚キ候毎度節険(倹)之事ヲ申遣モ却テ馬耳東風トヤラ一向ニ家政ノ困難ヲ不顧甚シ、前途永遠ナル身ニアリナカラ如何意入ナルヤ解セ難ク候、折返費途計算書送付スヘク候、兎ニ角二月中ニハ到底送金及兼候ニ付暫時猶豫可致候、
如斯費用ノ嵩ムハ新聞送付煙草ナルベシ、総テ中止スル方可然候、
耕次郎モ本年ハ高等學校了ル故実業学校ニ同人希望アルモ不能実ニ残念ニ候右用事迄早々
             野村長四郎
    野村長一殿
 
  【解説】「前略、いよいよ無事通学しているとのこと先ずもって大慶である。当方無事であるので安心せよ。今回17円送付するように申し越しがあったが、ほとんど金策に困難を極め、今月中には到底送金は難しい。次に、今月4日頃33円送金した。2か月間に80円の金額の費途何々の理由であるか。実に多額なのに驚いている。毎度節倹のことを申し遣わしても、かえって馬耳東風とやらで一向に家政の困難を顧みざること甚しい。前途永遠なる身にありながら、いかがな気持ちなのか理解し難い。折り返し費途計算書を送付するようにせよ。とにかく2月中には到底送金に及びかねるので暫時猶予するようにせよ。

  かくのごとく費用のかさむのは新聞の送付と煙草であろう。すべて中止する方がよい。

  耕次郎も本年は紫波高等小学校を卒業するので、実業学校進学を同人が希望しているが出来ず、実に残念である。右用事まで。早々」という内容。

  弟耕次郎が、日詰町にある紫波高等小学校を本年卒業となる。長一の学費送金のため家政がひっ迫し、耕次郎が、実業学校進学を強く希望しているのにかなえてやれないのである。加えて農業の働き手が足りないので家に置かなければならないのである。父、耕次郎の苦衷である。(岩手県歌人クラブ副会長兼事務局長)

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