2008年 3月 16日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉最終回 望月善次 いたつきのゆえにも朽ちん

 病(いたつき)のゆゑにもくちん
  いのちなり
  みのりに棄てば
  うれしからまし
 
  〔現代語訳〕病気の為に消滅するであろう私の命です。この豊作の中、御法の為に捨てることができれば嬉しいことです。

  〔評釈〕賢治絶筆二首の後半。半紙に墨書されたもので、昇天前日の一九三三(昭和八)年九月二〇日の作であることについては昨日も触れた。堀尾青史は、『年譜 宮澤賢治伝』において、絶筆に至る過程を『新校本全集』より一日早い一九日のことだとして「祭礼三日目、この日も快晴で、お旅屋に泊まっていたお神輿の還御の日である。賢治はさやわかな秋晴れをよろこんで歌を書く。」と記している。「みのり」は「実り(豊作)」と「御法」の懸詞だとした。短歌的に見るべき作品だとは言えないであろうが、いかにも賢治の絶筆らしい作品であることも否定できないであろう。昨日もお断りしたように、ひとまず本日で連載を終わりとしたい。改めて、長い間御愛読頂いたことに心から感謝したい。
  (盛岡大学学長)

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