前記のようにアメリカ占領軍の盛岡駐屯司令部から近かったせいか、盛岡電気通信工事局にはアメリカ兵がたまに顔を出していた。
当時盛岡の電話局と電気通信工事局が共同で使っていた建物は、道路に面した入り口がアーチ状になっていて、それをくぐって中に入ると中庭になっていた。中庭には電話局と工事局共用の用務員詰所兼湯沸かし室があり、大きな鉄釜でいつもお湯が沸いていた。
あるときたまたまそこに入って来たアメリカ兵が「この大釜の湯はなにに使うんだ」と質問した。案内していた職員が「職員のお茶用です」と答えると、「この事務所はお茶を飲むための事務所ではない、すぐ撤去しろ」と命令したのである。どうごまかしたか分からないがそれは実行されなかった。
当時電気通信工事局の1階には電話回線の試験設備があった。そこでは常時ではないが、回線の状態を監視するため回線をスピーカーにつないで傍聴することがあった。
たまたまアメリカ軍専用回線をモニターしていたときのことである。ただし、モニターと言っても誰も英語が分かるわけではないので、やっているのは雑音の有無をチェックをする程度のことである。
そこにアメリカ兵が入ってきたのである。彼は軍用電話の盗聴ととったのであろう、やおら腰のピストルを抜き出し「ホールドアップ」である。
ピストルを突きつけられた職員(たまたま居合わせた管理者である)がガタガタ震えたのはもちろんであるが、小便をチビッタとも伝えられた。
後でそのことを面白おかしく話をしていた人があったが、本人とすれば文字どおり命懸けであり、笑い話の種にされるのは心外だったであろう。 |