2008年 4月 13日 (日) 

       

■  岩手大学農学部グループ、期待高まるBRM研究 動物のがん抑制に効果

     
  岩手大動物医科学系プロジェクトとしてBRMの研究を進める佐藤れえ子教授  
 
岩手大動物医科学系プロジェクトとしてBRMの研究を進める佐藤れえ子教授
 
  岩手大農学部の佐藤れえ子教授ら同大動物医科学系の研究者8人のプロジェクトチームは、がんの抑制や免疫の活性化を促す新規BRM(免疫調整物質)の共同研究に取り組み、成果を上げている。BRMは天然成分。牛乳などに含まれる鉄結合性糖たんぱくの「ウシラクトフェリン」やミツバチが営巣のために作る「プロポリス」などが知られ、機能性食品として一部は人の治療にも併用されている。新しい薬品や治療法の開発へつながる意欲的な試みだ。

 佐藤教授らは、実験によってウシラクトフェリンが、イヌの乳がん細胞に対して直接的な増殖抑制効果を発揮することを確認。マウスを用いた直腸がん株化細胞に対する実験でも、ウシラクトフェリンを注射した腫瘍の体積の増加率が、注射しなかったものに比べ2、3割抑制されていることが分かった。

     
  粉末状のウシラクトフェリン。ラクトフェリンをテーマに国際学会が毎年、開かれるほど各方面で注目されている  
 
粉末状のウシラクトフェリン。ラクトフェリンをテーマに国際学会が毎年、開かれるほど各方面で注目されている
 
  ウシラクトフェリンによる治療は、同大附属動物病院に来院するイヌやネコといった伴侶動物に、実際に採用されている。左側腰部に線維肉腫と呼ばれるがんを再発した16歳の避妊雌犬の症例では、ウシラクトフェリンの局所接種と経口投与を実施。局所接種の翌日には痛みが消え、その後、約3カ月間、小康状態を保った。通常であれば余命1カ月程度の症例で、治療効果が確認できたという。別の症例では手術後の白血球の異常増多の沈静化や胸水の消失も確認した。

  佐藤教授によると、ウシラクトフェリンなどを用いたBRM治療は、悪性細胞を直接、攻撃する抗がん剤ほどの切れ味はなく、外科手術や放射線治療が難しい症例に対し、動物のQOL(生活の質、命の質)を高める緩和ケア的な目的で用いられている。「伴侶動物は飼い主にとって家族同様の存在。もう治療法はないと突き放されればつらい。BRMを用いた治療は飼い主にとっても希望になる」と話す。

  ウシラクトフェリンはイヌやネコにとっては異種たんぱくのため、長期にわたる継続投与はできない。今後はイヌやネコの細胞由来のラクトフェリンの開発研究や放射線治療との併用による相乗効果の検証なども進めていく。

  このプロジェクトではヒツジ、ニワトリなど産業動物の免疫を活性化させる機能性飼料添加物の研究も同時に行われている。シマミミズの抽出物を用いた実験では、ヒツジの免疫担当細胞の増加が観察されたほか、ラット由来の神経細胞やマウス由来の線維芽細胞の増殖促進効果も確認できた。抽出物には細胞を増殖させる因子が含まれていると予想され、将来的には新規薬品の開発につながる可能性もあるという。

  カボチャ、ベニバナ、オオバコ、スイカズラの乾燥粉末を主成分とするBRM「植物多糖体C‐UPV」の効果を検証する、ニワトリのひなの大腸菌感染実験でも、C‐UPVを添加した餌を与えたグループが、与えなかったグループより病変形成率が低くなる結果を得た。

  同大はエイズ感染ネコなどBRMや医薬品の開発、各種治療の検証に欠かせない特殊な実験系動物を数多く保持している。佐藤教授は「日本初の成果を岩手から世界に向けて発信したい。特許が取れるような研究成果を挙げ、新たなBRMの製品化に結びつけられれば」と意欲を燃やしていた。

  研究成果は2日、同大で開かれた学系プロジェクト経費研究成果報告会で発表された。同大は07年度から教育研究組織の学部・研究科と教員の所属組織を分離する「学系」制度を導入。学長裁量で約1千万円を予算計上し、学部・学科・課程の枠を超えた研究グループでの研究活動を奨励している。07年度は6件のプロジェクトが採用された。

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