2008年 5月6日 (火) 

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉43 及川彩子 聖なる樹オリーブ

 イタリアを旅すると、必ず出合うのが一面のオリーブ畑とブドウ畑です。ワインもそうですが、特にオリーブ油は、イタリア人にとってなくてはならない食品です。

  イタリアに住み始めた当初、店の陳列棚に品質・産地ごとに30種以上ものオリーブ油が、びっしり並んでいるのに驚きました。他の植物油も売られていますが、イタリアでは単にオリオ(油)と言うと、オリーブ油を指します。

     
   
     
  売れ筋は1リットル5ユーロ程のエクストラ・ヴァージン(一番絞り)。その数倍もする高級品は主に生食用。風味ある水あめ状の食油で、パンやピザ、パスタ、サラダと何にでもたっぷりかけて食べるのです。

  この高級オリーブ油は風味だけでなく、体内の不純物を洗い流すと言われ、我が家でも愛用しています。

  店に並ぶ一般の食用油はペットボトル入りですが、オリーブ油だけは瓶詰め。品質を保つためで、そんなところにもイタリア人のオリーブ油へのこだわりが見られます。

  オリーブの実は塩漬け、酢漬け、浅漬け、古漬けとして売られています。そのままワインのつまみにしたり、種を取って詰め物や揚げ物、すりつぶすなど、食べ方も多様です。

  本来オリーブは聖なる木。「ノアの箱舟が洪水で漂っていた時、飛ばした鳩がオリーブの枝をくわえて帰ってきた」と聖書にあるように、神が示した平和のシンボルです。

  カトリックの総本山、ローマのバチカン市国を訪れると、大広場の中心に植えられたオリーブの樹が目に入ります〔写真〕。神のごとく祭られ、記念撮影をする人が絶えません。

  その昔「豊富な油ゆえ、他の木々から『自分たちの王になって下さい』と頼まれたが、拒否した」というオリーブの木。食卓も精神も支えるオリーブは、摂理のシンボルでもあるのです。神の力は、天からだけでなく、地からも湧き出るのかも知れません。

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