【啄木の短歌】
起きてみて
また直ぐ寝たくなる時の
力なき眼に愛でしチュリツプ!
〔『悲しき玩具』38〕
〔現代語訳〕起きてみると、また直(す)ぐ寝たくなる時の力のない眼で、感嘆したチューリップなのです。
【賢治の短歌】
チュウリップ
かゞやく酒は湧きたてど
そのみどりなる柄はふるはざり。
〔「歌稿〔B〕」492異稿〕
〔現代語訳〕チューリップの花の中に、輝くばかりの「チュウリップ酒」は沸き立っていますのに、その(花の下の)緑の把手(である茎)は、震えてもいないのです。
〔評釈〕もともとは、6月掲載を予定していた組み合わせであるが、「雪谷川ダムフォリストパーク・軽米」の一面に広がる多様なチューリップ(オリンピック・イヤーに因(ちな)む「オリンピック・フレーム」や赤い大柄な花弁の「オックスフォード」が印象的だった。)を見たら、予定を繰り上げて掲載したくなって編集部に無理をお願いした。
現代においてもチューリップの鮮やかさ・まばゆさには、目を奪われるものがあるが、啄木や賢治の時代においては、トルコを経てオランダを中心に改良されたといわれるこの花が持つ鮮やかさ・まばゆさに、引きつけられるもの一層のものがあったであろう。啄木歌においては、結句の「チュリツプ!」に関連して、啄木自身の「tulip チューリップ」の発音はどんなものであったか、短歌定型論の上からも思った。賢治の場合は、チューリップと並んで漢名「欝金香(うっこんこう)」がよく知られる。詩的想像物である「チュウリップ酒」も著名。
(盛岡大学長)
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