2009年 1月 27日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉62 及川彩子 コーロ・アルトピアノ

 ここアジアゴの町に、混声合唱団「コーロ・アルトピアノ」があります。コーロはイタリア語で「合唱」、アルトピアノは「高原」の意味で、周辺の町や村の歌好き30人で編成されています〔写真〕。

  イタリアでは、どの町の教会にも聖歌隊がありますが、「コーロ・アルトピアノ」はそれとは別の合唱団。宗教曲以外にも、民謡や歌曲など幅広いレパートリーを目指しています。

     
   
     
  指揮者は、音楽院出身でオルガ二ストのフランチェスコ。お医者さん、学校の先生、郵便局員、保母さん、学生と職業も様々で、年齢も10代から80代まで。まさに市民の縮図のようなグループです。わたしも2年前に誘われ、週に2度、夜9時から2時間の練習に参加しています。

  夏のヴァカンスには、市主催のコンサートがあり、町の観光にも一役買っていますが、活動の中心はクリスマスシーズン。教会のミサをはじめ、方々の養老院の慰問など連日のように演奏会が続きます。

  オルガンも聖歌隊もない、小さな村々の教会での演奏会は格別です。日本でも多くのコンサートで、当たり前のように宗教音楽が演奏されますが、静まり返った聖堂で、聴き入るお年寄りや子供たちを前に、声を合わせていると、「祈り」にも似た、音楽本来の姿が見えるような気さえするのです。

  時間をやり繰りして集まる合唱活動は、趣味を兼ねた奉仕。「もう70年も、この町で歌っているよ。それが自慢だね」と83歳のアルドは意気盛んです。

  指揮者フランチェスコの研ぎ澄まされた感覚と、指先から引き出される響き。各パートの声の役割は、グレゴリオ聖歌の時代から少しも変わっていません。

  わたしが参加してすぐ、日本古謡「さくら」をレパートリーに加えてくれました。サクラは、イタリア語で「神聖」なこと。この町でのわたしの居場所が、ひとつ増えました。

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