2009年 2月 6日 (金)

       

■ 〈お父さん絵本です〉244 岩橋淳 「きもち」

     
   
     
  雑誌に発表されてから30年を経て、昨年単行本化された作品です。

  公園で遊ぶ男の子の手から奪われた、自動車のおもちゃ。主人公は、「取り上げた側」の少年です。得意満面、ともだちの前で自慢げに遊ぶ姿。…というのは、読み手の想像に過ぎません。実はこの作品、登場人物のせりふはおろか、文字や言葉による解説は結末近くまでつきません。読者は、場面場面で自分なりの想像によってものがたりを考え、読み進まなければなりません。…だから主人公は、自分のおもちゃを返してもらっただけなのかもしれません。あるいは、もっと違った事情があったのかもしれません。

  捨て猫を見つける。お母さんの表情が曇る。病院へ行って注射を受ける。泣いているところを、女の子に見られる。両親がケンカをしている。怖い夢を見る…。せりふは、いっさいありません。何が語られ、その奥にはどんな「きもち」があるのか。読者は、主人公、周囲の人、捨て猫にいたるまで、「きもち」を考えながらものがたりを作っていくのです。

  現代にもっとも求められているもの、他者への思いやりの気持ち。それは30年前のこの作品で、すでに問われていたのです。

  【今週の絵本】『きもち』谷川俊太郎/ぶん、長新太/え、福音館書店/刊、880円(税込み)4歳〜(1978年)

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